QualiArtsの2022年の技術組織を振り返る

はじめに
株式会社QualiArts 技術担当役員の山田 元基です。
本記事は QualiArts Advent Calendar 2022、最終日、25日目の記事になります。
今年のQualiArtsは新規ゲームのリリースがありませんでしたが、既存プロダクトの運営に注力しながら開発力強化施策を数多く行いました。施策を進める中でオンラインで議論をする機会も多かったのですが、本格的にリモートと出社のハイブリッドな働き方が定着してきたので有意義に実施できていると思います。本記事ではQualiArtsのこの一年間を振り返ります。
今期のテーマ「骨太」
今期はテーマ「骨太」として技術組織の強化を実施してきました。 注力した組織課題3点を振り返ります。
- 次世代の技術ボード候補が増やせていない
- 新規立ち上げのリーダー候補が増やせていない
- 属人化している役割がある
1.次世代の技術ボード候補が増やせていない
弊社は技術ボード「TEC-ACE」主導による技術戦略の策定と実行を行ってきました。 技術ボード内の意思疎通や施策の精度が高くなるにつれて経営課題の先回りが行えている状態になり技術組織は強化されました。 しかし次世代育成という面では現在のボード陣が活躍しているため世代交代を行う難易度が高くなりました。(嬉しい悲鳴) そこで次世代候補者に意思決定の権限の委譲を行っていくための一歩として分科会の設立を決定しました。
TEC-ACE分科会
TEC-ACEの6名がリーダーとなり6つの分科会を作り今期のテーマ「骨太」に取り組みました。 分科会では様々な取り組みを実施しましたが注力した施策を紹介します
バックエンド分科会
- 「GROWS」プロジェクトの設立(GROWS = Game Roadmap Writing for Server)
- 新規プロジェクト向けに立ち上げノウハウのドキュメント化を推進
クライアント分科会
- 基盤の属人化解消プロジェクト「Unipedia」
- Unityの基盤の機能を知れる仕組みづくり。社内基盤のUIツールのドキュメント化を推進
- デバッグ自動テストの導入
TA分科会
- 技術強化・継承
- TAの制作ラインを増やすための取り組みを実施
開発ディレクター分科会
- 開発ディレクターの育成
- QualiArtsの開発ディレクターに求められる役割を言語化
技術広報分科会
- 「TechNote」技術ブログの運営
- 毎月1記事以上の公開を行うために執筆内容決め
- 外部登壇や広報の強化
- これまで弱かった技術広報強化のためにカンファレンス登壇を積極的に行いました
- GO Conference に3件登壇
- Unity SYNC 2022 に2件登壇
- CA.unity に1件登壇
- その他にも3件の登壇を行いました
若手育成・活性化分科会
- トレーナー育成、振り返りの運営
- 社内のエンジニアの繋がり強化を目的とした「エンジニアアルバム」の作成
TEC-ACE分科会まとめ
どの施策もリーダーを中心に各分科会が企画から実行まで責任を持って進めてくれました。 その中でも技術広報は取り組めていなかった課題なので非常に助かっています。 属人化解消のための取り組みも行い組織課題の解決に繋がっています。 TEC-ACEで議論していた事が分科会で実施する事が出来て、次世代技術ボード候補者の視点を高められている実感があります。 分科会は来期もブラッシュアップしながら継続する予定です。
2.新規立ち上げのリーダー候補が増やせていない
新規開発ラインを増やすためにリーダー人材を増やしたいと考えていますが、思うように候補者が増えていないという課題がありました。 主要因3つに対して対策を進めました。
新規ゲーム開発の長期化に伴い、リーダー経験サイクルが長くなった事
新規ゲーム開発を経験するのは難しいため、運用リーダー経験サイクルを早める事にしました。 ゲーム開発は新機能の開発を常に行っているため、運用リーダーのサイクルを早める事で一定は補完できると考えたためです。 今では経験3〜5年のメンバーを中心にゲーム運用を行っています。
新規ゲームの大規模化に伴い、若手のリーダー抜擢のハードルが上がっている事
抜擢ハードルは上がっていますが、次期リーダー候補をリーダーにする。 一方でリーダー経験がある人がサブリーダーとして支える体制で抜擢を行いました。 まだリリースをしていないため結果はわかりませんが、順調に成長してくれていると思います。 若手にリーダー職を任せる事で経験豊富なベテランが新しいチャレンジに時間を使う事が出来て総合的によい判断が出来ていると思います。
ゲーム開発の難易度が上がり、リーダーポジションが細分化された事
新規のリーダーが足りないという話を分解していくと、そもそも必要としているリーダー像が不明瞭な事に気づきました。 ゲーム開発難易度が上がり専門性が求められてきたので、クライアントエンジニア、サーバエンジニアのような単位では必要な役割が具体的に見えてきません。 そこで必要なリーダー人材の役割を明文化する取り組みを行いました。 結果、必須ポジション8つを定義して新規開発時には必ず満たされる状態作りをする事にしました。
ゲーム開発における必須ポジション
- Unityクライアントエンジニア
- インゲームリーダー
- アウトゲームリーダー
- アウトゲームサブリーダー ×2
- システムリーダー
- ビルド基盤担当(兼務可能)
- バックエンドエンジニア
- アプリケーション+インフラのリーダー
- アプリケーションサブリーダー
- インフラサブリーダー
3.属人化している役割がある
チーム人数規模が大きくなり役割が細分化された結果、一部のエンジニアしか把握していない事が増えてきました。 役割が分かれて専門性を突き詰めると属人化されていきますが、許容度を超えるとリスクになるため解消していく必要があります。
属人化の解消は職種単位で対策を決める方が良いと判断し、分科会で議論して進める事に決めました。
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インフラ属人化解消
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QuaOpsチームを結成し、ブラウザタイトルやバックオフィスのインフラ属人化の解消を進めました。
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出来る領域からQuaOpsチームが業務を巻き取る事で徐々に属人化が解消されています。
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基盤属人化解消
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テックリレーという施策を実施しました。
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グループに分かれて順番に属人化を解消していく取り組みで、ライブラリのメンテナーを増やしたり、新しいライブラリやツールを生み出したりする事ができました。
その他に大小様々な属人化解消に向けた取り組みを実施しました。
技術組織の未来を考える「先回っテク会議」
新規のHIT確率を技術アプローチで高めるために、先回って議論していく会議を実施しました。 全エンジニアが8チームに分かれて事前に議論を行い、発表時間内なら何案でも提案可能という新しい形で実施しました。
テーマは2つの技術アプローチ
- HITを生み出すための武器になる技術アプローチ
- 品質向上・運用効率化につながる技術アプローチ
結果は事前の想定以上の大小含めて全25案が提案されました! 小さい提案は即実行、規模の大きい8つの案は内容を詰めて動き出す事が出来ました。 エンジニア以外の効率化につながる技術アプローチの提案も複数あり、既に開発・導入が始まって感謝される機会も出てきました。
今回の先回っテク会議はTEC-ACEのリーダーである@iyuに任せていましたが、全エンジニア参加で何案でも提案可能という新しい形式を生み出してくれました。 自分がリーダーとして進めた場合は異なる形式にしていたと思うので、任せて良かったと思っています。
技術責任者の継承
直近2年間、技術組織の責任者である私自身のミッションとして次世代の技術組織責任者の育成を進めてきました。 今期はTEC-ACEが中心となり骨太をテーマに次世代の技術ボードや属人化の解消を進めてきましたが、実は最も属人化が進んでいるのは技術組織責任者の役割です。 QualiArtsを設立する以前から技術組織の統括を担ってきたため、すぐに引き継ぐのが難しい状態になっていました。そのため役割を継承できる状態作りを進めました。
- 技術ボード「TEC-ACE」のリーダー引き継ぎ
- 技術戦略の策定や実行を担うTEC-ACEリーダーは昨年10月に執行役員に就任した@iyuに引き継ぎました。
- 前述の先回っテク会議の運営、TEC-ACEの運営を安心して任せられる状態になってきました。
- 目標設定、評価、1on1のリーダー引き継ぎ
- 技術組織強化を目的に活動するQUBEに引き継ぎました。
- 目標設定会や評価制度の改善などを主体的に行っており、技術組織強化に寄与している状態になっています。
- 採用・育成のリーダー引き継ぎ
- 新卒採用・育成は分科会や採用ミッションを持っている若手に引き継ぎました。
- 新卒との距離も近く完全に任せられている状態です。
- これから引き継ぐ事
- 査定評価、異動や抜擢などの人事面が唯一残っています。
- 来期はしっかり引き継げる状態作りをしていく予定です。
最後に
この1年間は骨太をテーマに技術組織の強化を行ってきました。 少しずつ分科会設立による成果が出始めてきており、組織の変化を感じています。 私自身は技術責任者の継承を進める中で、長い年月をかけて築き上げてきたものを引き継ぐ難しさを感じています。 同時にもっと上手く引き継げる状態作りをしておくべきだったと感じています。
来期は査定評価や異動や抜擢などの人事面などを任せて継承されている状態作りに踏み込んでいく予定です。 技術組織を新しい人に任せ、私自身は新しいチャレンジに飛び込んでいく事で組織の循環を率先していきたいと思っています。
来年のアドベントカレンダーの最後は相原に引き継ぎます!お楽しみに!