IDOLYPRIDE新機能360°ライブのこだわり

はじめに
株式会社 QualiArts でテクニカルアーティストをしている我彦です。ツールの開発やTimelineを用いた新しい表現の実装を担当しています。
QualiArtsが運用を行うモバイルゲーム「IDOLY PRIDE(以下アイプラ)」は2025年6月24日に4周年を迎えました。
今回はそこで追加された新機能『360°ライブ』の開発でのこだわりについて紹介します。
360°ライブについて
360°ライブは4周年を記念した新規機能として開発が始まりました。
アイプラではユーザーさん(以下マネージャーさん)にご参加いただき、開発者が直接ご意見をお聞きできるマネージャーミーティングというイベントを開催しています。 いただいていたライブへのご意見やご要望も取り入れ、開発した機能です。
アイプラではライブ撮影・お仕事撮影・ポーズ撮影・ストーリー撮影など、様々な撮影機能が開発されてきました。
360°ライブは、従来のライブ撮影のように決められたカメラワークでライブ撮影を楽しむ形式とは異なり、 5つのカメラモードでそれぞれ異なる撮影体験を提供しています。
観客カメラ
様々な位置にある定点カメラを楽しむことができるモードです。 観客席の視点からライブ会場の臨場感を味わうことができます。
専用カメラ
選択したアイドルにフォーカスができるモードです。 視線追従機能を使ってこちらに目線を向けてもらうこともできます。
オートカメラ
カメラが自動で移動するため、手軽に撮影を楽しめるモードです。 初心者の方でも美しいライブ映像を手軽に撮影することができます。
ステージカメラ
アイドルの周りを360°回ることができるモードです。 簡単に後ろに回り込んだり、様々な視点でライブを楽しむことができます。
ドローンカメラ
エリア内を自由に移動することができる最も自由度の高いモードです。 空中からの視点でライブを俯瞰したり、ステージの裏側から普段見ることのできない視点でライブを楽しめます。
そのほかの機能


そのほかにもいくつかの機能を実装しました。
アイドル注視機能はライブ中のアイドルを選択すると、選択したアイドルをカメラで捉え続けることができます。
視線誘導機能はアイドルと目線を合わせることができるようになります。
さらにカメラの移動速度や撮影を繰り返し見られる撮影リプレイ機能、オリジナルのユニットをあらかじめ編成できるマイユニット設定など360°ライブを楽しんでもらえるような機能を実装しました。
視線誘導機能の開発
360°ライブでは専用カメラにアイドルが目線を合わせてくれる視線誘導機能があります。 これはポーズ撮影機能の視線誘導機能を元に開発しています。
ポーズ撮影はポーズや目線などを自由に決めて撮影することができる機能です。 以下の画像は『自然に』と『こっち見て』の比較です。

視線誘導機能は無理のない姿勢で振り向きをすることができます。 しかし、360°ライブにおいてはこの無理のない姿勢で振り向きをすることは難しいものでした。
理由としてポーズ撮影では動きがないのに対し、360°ライブではダンスの動きがあることです。
ポーズ撮影では振り向くために無理のない姿勢を維持させることが容易でした。 対して、ライブのようなダンスの場面では体が大きく動くため、後ろを向いている時などカメラを見るのが難しい姿勢がありました。
そこで視線誘導機能の改善を行い、動きながらでもアイドルの姿勢を正確に把握できるようにしました。 これにより、360°ライブでも無理のない姿勢での振り向きを実現しています。
視線誘導機能はより自然な振り向きを実現するために、振り向き方を細かく調整することができます。 ポーズ撮影では『目線向けて』『こっち見て』、寝ている状態でそれぞれ振り向き方が異なっています。

360°ライブでは専用の振り向き方に調整をしています。 「アイドルがこっち見てくれたかも!?」と感じてもらえるようにしています。 この目線は実際のライブでのカメラ目線などを参考にして何度もチームで調整を行いました。

ドローンカメラの開発
360°ライブで特に開発が大変だったのはドローンカメラでした。 ドローンカメラは半年以上の時間をかけて開発した機能です。 360°ライブの開発初期から完成まで、ずっと向き合って開発した機能でもあります。
ドローンカメラとアイドル注視機能
ドローンカメラの1番の課題は操作の難しさでした。 エンジニアが操作方法の提案・実装を行い、チームで遊び意見を集約し、それを元にした改善を毎週繰り返しました。
ドローンカメラの体験向上に貢献しているのはアイドル注視機能だと思います。
アイドル注視機能は「移動しながら角度を変えることが大変」という意見から生まれています。 ドローンカメラは前後左右の移動の加えて縦の移動があり、さらに角 度の調整となると指だけでの操作は大変だという問題がありました。
最初はジャイロでの角度操作が提案され実装を行いましたが、まだ難しいという意見が出ました。
次の改善提案のために現実ドローンを調べ、自動追従機能があることを知りました。
この機能をゲームに落とし込むためにエンジニアが試行錯誤した結果、アイドル注視機能が生まれました。
アイドル注視機能は常にアイドルが画面中央にいるようにカメラが回転するので角度を調整する必要がなくなり、操作性が向上しました。
このような手触りや遊びの提案をエンジニアが行うことで、実装・意見集約のイテレーションが早めることができたため、難易度の高いドローンカメラの改善につながったと考えています。

アイドルにどこまで近づけるようにするか?
ドローンカメラの実装においてアイドルにどこまで近づけるようにするかは重要でした。
実装初期は激しいダンスモーションによりドローンカメラとの衝突時にすり抜けてしまう問題があり、当初はステージ内には入れないようにしていました。 しかし、毎週のチームでの確認で「アイドルにギリギリまで近づきたい」「後ろに回り込んで撮りたい」などの意見が上がりました。
エンジニアとしても実現したいと思い、移動処理や当たり判定を見直し、リリース直前まで調整を行いました。 結果として、現在のようにアイドルにギリギリまで近づいたり、アイドルの後ろ側から撮影ができるようになりました。
当たり判定の調整には弊社ブログで紹介しているコライダー可視化ツールが役立ちました。
これにより可視化された当たり判定をもとに、実際にドローンを動かしながら調整を行うことができました。

デザインでのこだわり
最後に360°ライブを開発する上でのデザイナーのこだわりを紹介します。
カメラについて
推しカメラは高さとズーム具合の調整に一番時間をかけています。 高さを5パターンほど用意して検証を行い、アイドルがほんの気持ち上目遣いになるような高さに調整しています。
オートカメラは普段のライブと異なり、カットを割らずに一連で作成をしました。 ライブに没入してもらうことを大事にしてます。
観客カメラは実際のライブ座席からの目線を再現するように制作しています。 ご自身のライブ体験を思い出しながら360°ライブを見ていただけると嬉しいです。

振り付けやライブエフェクトなどについて
360°ライブは様々な視点でライブを見ることができるため、振り付けやエフェクトなども従来のライブとは異なる、360°ライブ特有のこだわりが詰め込まれています。
ステージ後方のモニター映像は、曲の歌詞や振り付けに合わせて個別に制作をしています。 カメラを引いてアイドルと一緒に見ていただけるとより楽しめると思います。
『サヨナラから始まる物語』は通常のライブが実装されていたため、イメージを保ちつつライブエフェクトの調整を行いました。 4周年を記念した新曲『ありがとう to You』では、どこから見ても楽しめるようなフォーメーション移動を意識して振付を制作していただきました。
今まではカメラに映らなかったダンスや表情が360°ライブではしっかりと見ることができるので、ぜひ歌っているアイドル以外にも着目してみてください。

まとめ
360°ライブは4周年を記念した新規機能として、半年以上の期間をかけて制作を進めてきました。 マネージャーミーティング、生放送でのコメント、SNSへの投稿を拝見し、チーム一同嬉しく思っています。
今回紹介した内容以外にもアイプラを楽しんでいただける要素を各所に詰め込んでいますので、ぜひ新しいアイプラならではの機能『360°ライブ』を楽しんでいただければと思います。
